うにゃにゃ通信

日本近現代史系公開めも書き

人流抑制は感染対策に効果あんの?

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「大型連休 新型コロナ 集中的な感染対策で人流抑制へ 政府」(2021年4月29日 4時42分)とNHKは伝えているが、人流抑制は感染対策に効果があるのか。NHKのデータで東京都の感染者数の推移(左)と街の人出の状況(右:ここでは渋谷スクランブル交差点付近)を昨年12月28日を起点に並べてみたが、人出と感染者数に何らかのリンクがあると思えない。ちなみに渋谷スクランブル交差点付近以外の地点でもリンクがあるとは思えない。

今回の緊急事態宣言での政府の感染対策ははたしていかなる科学的根拠に基づいて行われているのか。なお東洋経済ONLINE「「人流」分析で明らか「自粛疲れ」「規制効果なし」」では、

内閣府の『令和2年度年次経済財政報告』(経済財政白書、2020年11月)は、移動データと感染者数のデータについて時間差を考慮したモデル(VARモデル)による検証を行った結果、「外出率の低下は新規感染者数に有意に影響を及ぼさず、感染者数の増加が外出率を低下させる」という関係性があると示している。この結果は、以下の筆者の分析の結果と一致する。 そして、「感染者数の増加が外出率を低下させる」影響も、最近ではかなり低下していることがわかった。

とある。ん?「外出率の低下は新規感染者数に有意に影響を及ぼさず」って昨年11月に内閣府が発表してるのに人流抑制ってどういうことだ?無意味な感染対策に僕らを巻き込んでるってことか。

こないだ小池都知事が「どうしても出勤が必要な方以外は可能な限り東京に来ないでください」と言ったが[link]、あのヒステリー(そうとしか思えない)を実行して、何の意味があるのだ。

好意的な解釈をすれば、強い対策を打ち出すことによる心理的効果を狙ったのかもしれないが、みんなの反応は「僕らそんなにアホじゃないから」って感じに既になっている気がする。

一年前に8割おじさんあたりでさんざん言われて今さっぱり言われないのが謎だけど、接触回数の削減が感染対策に有効なのだよね?いくら外出したところで、ずっとマスクして、誰とも話さず接触せず、一人で黙ってメシ食って帰れば接触ゼロなのではないのか。国や自治体の長が訴えるべきはステイホームや不要不急外出自粛なんかではなくゼロ接触・ゼロ飛沫の徹底なのではないか。

伝えるメディアにも問題があると僕は思う。人出の状況をニュースで伝えたり人出データを出したりする以上は人出が減れば新規感染者が減るという前提があるんであればその根拠を示してほしい。示せないならそんなこと伝えるのをやめてほしい。朝日新聞埼玉版記者は埼玉のどっかの道で県外ナンバーが100台中何台だとか、一年前の自粛警察モデルみたいな記事を書くのはたとえデスクに命令されたからだとしても自分の頭で考えてやめてほしい。自粛警察は君たちのパクりなのだから。

※後記(2021-05-05):『令和2年度年次経済財政報告』を確認。「付注1-1 グーグルモビリティインデックスと新規感染者数の関係について」(PDF)で、

外出率の低下は全期間を通じて新規感染者数に有意に影響を及ぼさなかったこと、新規感染者数の増加は緊急事態宣言期間を含む、第1期においてのみ外出率に有意に負の影響を与えたことが示唆される。

 とあった。「ここでの因果性とは統計的な相関関係のことで、一般的な意味での因果関係を必ずしも意味しないことに注意が必要である」とのことだったが。

いま、政府と自治体、それに新聞テレビ等のメディアは「人出=悪」というイメージを人々に刷り込み人流抑制を図ろうとしている。質の低い報道が、本来報道は権力の監視にあるとの目的を忘れ権力に同調し悪者叩きをしている。それは多くの読者視聴者(高齢者)の同感を呼ぶものであるかもしれないが弊害を自覚しているようには思えない。その悪者叩き(ぼくには魔女狩りにも見える)によって問題の本質がすり替えられている。政府と自治体がどこまで自覚的なのか知らないが、問題の本質は「一部の不心得者」ではない。市民の一部に不心得者がいたとしても、彼等が感染拡大の本丸だとは思えない。本丸は政府と自治体の対策が手遅れだったり間違ってたり手抜かりがあったりすることではないか。彼等の対策の不備を、科学的知見などに基づき正しく批判し正していくことが報道機関のやるべきことなのではないか。あたかも街にあふれる不要不急の外出者(不心得者)が医療機関の逼迫崩壊の原因になっているかのようなイメージで編集された映像を自省なしに垂れ流しするのは報道機関の職務放棄・思考停止なのではないか。