うにゃにゃ通信

日本近現代史系公開めも書き

「私、失敗しないので」は失敗の歴史からか。

 米倉涼子主演のドラマ「ドクターX~外科医・大門未知子~」の決めゼリフ「私、失敗しないので」について考えている。なぜ視聴者は、人々は、「私、失敗しないので」に喝采を送るのか。

「ドクターX」は、タイトルからも、そして、ナレーションに田口トモロヲを起用している点からも、NHKがかつてやってた「プロジェクトX」のパクリドラマだ。「オマージュ」って言うかもしれないけど、まあどっちだっていいや。

プロジェクトX」は、戦後日本をつくりあげた名も無き人々、が主人公のドキュメンタリー番組で、定番的展開としては、失敗につぐ失敗→最後は成功で感動のエンディングって感じ。戦後日本を、名も無き人々の努力の積み重ねの上に成功をおさめた国と定義している。この定義は、多くの日本人とくに高度経済成長は自分の手柄だと考える現在の高齢者層の歴史観・国家観とも合致して心地が良いので、少なくともかつては多くの日本人に信じられていた。…という「X的価値観」が「私、失敗しないので」のベースにあるとみている。

「私、失敗しないので」という宣言は、通常の感覚であれば、怪しい。失敗しない人間など、この世に存在しないから、フィクションにしかすぎない。ドラマだからフィクションでいいんだけど、しかし、何がしかのリアリティがある。

それは、このドラマに喝采を送る人々の意識に、「失敗の歴史」が根強くあるからではないか。

失敗の歴史。それは、昭和20年の敗戦。日本は空襲で都市を焼け野原にされ、沖縄を蹂躙され、原爆を落とされ、ソ連に参戦され、ボロ負けの状態で降伏した。その後昭和27年まで、占領され、独立を奪われていた。

だからこそ、「失敗しない」大門未知子というフィクションに喝采を送るのではないか。

とすると、この国はいまなお、「戦後」を生きているのだ。